今日彫刻家イサム・ノグチの父としてより知られているヨネ・ノグチは、明治26年、満18歳にならぬ身で単身渡米し、放浪生活の後英語で詩を書き、19世紀末から20世紀初頭の英米文壇にセンセーションを巻き起こした日本人です。
明治37年に帰国後も英文著作を多くあらわし、日本文学・文化を西欧に紹介すと同時に慶應義塾大学の英文学科初代主任教授に就任し、ジョイスやパウンドなど当時の最先端の西欧文学・文化を日本に紹介しました。
「国際詩人」として名を成すと同時に、まさに「東西の架け橋」として大活躍した作家、文学者で、日本人でノーベル文学賞を受ける人があるとすれば彼だと称されたこともあります。
しかし、日本の敗戦後、ヨネ・ノグチの名は世間から忘れ去られてしまいました。
それはひとつには、彼が第2次大戦中愛国主義を鼓吹し、戦争賛美の言論を繰り広げたことにあるかもしれませんが、東西を股にかけた彼の文学活動そのものが、彼の著作をしだいに宙に浮かせてしまったことも大きな原因の一つでしょう。
金子光晴は「藤田嗣治がフランスで成功したために、日本の画家たちからボイコットされたように、野口米次郎の詩も、名声ほどに日本人の間で親しまれなかったのは、日本人の偏狭さのゆえがあったのか」と論じています。
ところが近年、文学・文化研究が国際性をおびるにつれて、ヨネ・ノグチの再評価の気運が少しずつ高まってきています。
アジア系アメリカ文学、植民地文学、ポスト・コロニアリズム研究等々、さまざまな切り口から彼の文学、文化活動に積極的な意味を見出す試みが始まっています。
しかしながらこの研究活動の基盤をなすべき彼の英文著作は、今日そのほとんどが稀覯本で、容易に参照できなくなっていました。
今回、亀井俊介東京大学名誉教授の監修で初めてまとめられた著作集は、英文で発表された彼の詩、小説作品と日本文化論のすべてを復刻で集成(英文美術評論集も後日刊行予定)、ヨネ・ノグチ復権とその研究のさらなる展開への資料として提供するものです。
監修者による詳細な解説、解題や海外新聞に掲載された関連の記事なども付録します。
日本研究や英国研究などの分野における欧文史資料の復刻出版を手掛けるEdition Synapse社が発行し、紀伊國屋書店が発売元となります。
■商品詳細
『ヨネ・ノグチ(野口米次郎)英文著作集-詩集・小説・評論-』
全6巻+別冊解説(日本語)
Collected Works of Yone Noguchi in English: Poems, Novels and Literary Essays
監修・解説:亀井俊介(岐阜女子大学/東京大学名誉教授)
A5判 約2800頁2007年1月22日刊行